子どもの噛みつき行動を考える

乳児を担当していると噛みつく子に出会うことが多い。

保育を始めて間もない頃は噛みつきが多発して毎日保護者に謝罪していた。

嫌になって子どもを怒ってしまうこともあった。

噛みついてしまう理由もいろいろ調べた。

①言いたいことがあるが、言葉で表現できないため噛みつくことで表現してしまう。

②触覚の認知機能が育っておらず、そばに来たものを本能的に危険と察知してしまい反射のような形で噛みついてしまう。

③歯が生え始めていてむずがゆくて噛んでしまう。

などあると本に書いてあった。本当のところは本人にしかわからないし、なんなら本人だってわからないのかもしれない。

ただよく観察していると噛みつく子は噛みつきたくて噛んでいるようには見えない。

咄嗟に出た行動が噛みつきだったように見える。噛まれた相手が泣いたのを見て驚いていたり、噛んだ後に悲しそうにしていたりする様子はあっても噛んでやったぜ!というような様子の子はまずいない。

自分のおもちゃが取られてしまって噛みつくとか、いやなことがあって噛みつくとか、周りの状況がよくわからなくてパニックになって傍にいる子を噛んでしまうなど、私が見てきた限りではその子にとって危機的状況での防衛反応として出ている場合が多いように思う。

そういう状況では、噛む子に思いがあるように見える場面が多いので、言いたいことが言えないから噛むというように説明されたり、丁度歯が生え始めるころから噛みつき行動が出始めることが多いので歯の生え始めが原因とされているが、私としては②の危機的状況での防衛反応という説が濃厚なのではないかと思っている。

また、噛みつき行動が出る子には感覚の敏感さがあることが多いようにも感じる。

もしも、噛みつき行動が咄嗟に出てしまう行動だとしたら、それに対して怒ったり、やめなさいと言っても難しいことなのではないかと思う。

鼻にゴミが入って出てしまうクシャミや急に目の前を車が横切った時に驚くのを止められないのと同じように。

だとしたら、噛みつき行動が出ないようにするために何ができるのか。

1つは危機的状況と感じることをなるべくなくすことではないかと考えた。

遊んでいる時に友だちが近くにくると噛んでしまう子に対して、遊んでいるところを跨いで出入りできるような仕切りで囲い、その子のスペースが視覚的にわかるようにしてみた。すると、その中に友だちが入ろうとすると「だめだよ」「いいよ」などと言い、「いいよ」と言った相手に対しては受け入れて安心したように遊んでいた。スペースを区切ることで急に誰かが自分のテリトリーに侵入してくる危機的状況を回避できたことで噛みつき行動が出にくくなったのではないかと思う。

また、仕切りはなくとも部屋に一人一人が十分スペースを取れるように部屋にいる子どもの人数を減らすことも有効だったし、椅子などで定位置を作って活動するなども安心して過ごせるようだった。

感覚の敏感さも危機的状況で咄嗟に口が出てしまう要因だと思ったので、砂や泥、粘土や絵の具、片栗粉、小麦粉、寒天ゼリーなど、あらゆる感触に触れる機会を作ることも意識的に取り入れた。また、くすぐりや抱きしめるなどの触れ合い遊びも多く取り入れることで触覚への刺激に慣れ、触覚からくる情報を危険なものと捉える本能よりも感触を理解し、脳が理解できる情報として処理できる力を育てることも意識的に取り入れてきた。

この二つの取り組みから、噛みつき行動は大幅に減った。ただ、その子の体調や家庭環境の様子によって噛みつき行動が出ることももちろんあった。

続いて噛みつき行動をとってしまった後の対応についても書いておきたいと思う。

上記したように子どもの噛みつき行動は咄嗟の行動であると認識しているので、

「噛みたいわけじゃなかったね」と噛みつき行動をとった子を抱きしめることから関りを始めるようにしていた。

その時に子どもが何を感じて噛みつき行動が起きてしまったのかを言葉にすることを大事にしていた。

「おもちゃとられてびっくりしたね。とらないでほしかったね。」とか「急に友だちが前に来たからびっくりしたね」など子どもの気持ちを代弁したあと、話せる子であれば噛みつき行動をとった本人に「びっくりした」とか「いやだった」とかその時の気持ちを言葉で言えるように対応する。

そうすることでネガティブな気持ちが心に溜まらず、消化されると思っている。

それから、噛まれて痛い思いをしている子に「急に〇〇くんが目の前に来たからびっくりして噛んじゃったんだ。ごめんね。痛かったよね。〇〇くんはただそばを通っただけだったんだよね」と起きたことや本人の気持ちを代弁する。そして、噛まれた子から噛んでしまった子へ「痛かったよ。かまないでね。ただそばを通っただけだったんだよ」と一緒に言い、噛んだ子から噛まれた子へも「びっくりして噛んじゃったんだ。噛みたかったわけじゃないんだ。ごめんね」と一緒に伝えるようにする。

お互いが思っていることが大人の言葉で丁寧にしっかり言語化されれば、子どもたちは納得して笑顔になったり、またそれぞれに遊び出したり、一緒に遊んだりと仲直りした様子を見せる。

噛みつき行動をとる子が悪者になったり、自己肯定感が下がるような対応は絶対にしたくないと思って対応していた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました